障害者雇用で働いていると、「合理的配慮」という言葉は耳にするものの、
自分が何を求めてよいのか、どう伝えればよいのか、判断しにくいことがあります。
この記事では、合理的配慮の意味から、ADHD・発達障害当事者が実際に受けている配慮の具体例、上司・人事への伝え方、配慮が得られないときの次の一手まで、順を追って整理します。
たかちゃん
ADHD×ASDと約20年向き合ってきた30代会社員。
学生時代には不登校やいじめを経験しながらも、現在は上場企業のオープンポジション枠で障害者雇用として働いています。
発達障害と向き合いながら、結婚・子育て・マイホーム購入・住宅ローン返済中のリアルな日々を発信中。
本ブログでは、働き方・制度活用・お金・子育て・暮らしの工夫など、これまでの失敗や挫折も含めて、同じ悩みを持つ方やご家族に向けて発信しています。
野球・音楽・旅行が好き。人生を笑顔で過ごすことをモットーに、今日もなんとか奮闘中です!
合理的配慮とは?障害者雇用における意味を当事者向けにやさしく解説
合理的配慮とは、障害のある人が社会生活や仕事の中で直面する
「困りごと」を取り除くために、状況に応じて必要な調整を行う考え方です。
ただし、どんな希望でもそのまま認められるという意味ではなく、障害の特性や具体的な状況、相手側の負担などを踏まえ、話し合いながら必要かつ合理的な範囲で対応していくことが基本とされています。
障害者雇用では、障害者雇用促進法第36条の2・第36条の3などを根拠に、募集・採用時や採用後の合理的配慮が事業主に義務付けられています。この仕組みは2016年4月1日から施行されています。
一方、店舗やサービスなど雇用以外の分野では、障害者差別解消法が基本となります。行政機関等は第7条、事業者は第8条に合理的配慮の規定があり、民間事業者についても2024年4月1日から提供が法的義務になりました。
合理的配慮は一律に決まった対応ではありません。自分が何に困っていて、どのような配慮があれば負担を減らせるのかを伝え、相手と一緒に現実的な方法を考えていくことが大切です。
ADHD・発達障害当事者が実際に受けている配慮の具体例
配慮の具体像がつかめないと、何を求めてよいかも分かりません。
筆者自身がADHD・発達障害当事者として実際に受けている・求めた配慮を、
業務・環境・コミュニケーションの三つに分けて整理します。
業務のアサイン・タスク管理に関する配慮
筆者が受けている配慮のひとつが、中長期の業務を中心にアサインしてもらうことです。
突発的な短期タスクを主軸にするのではなく、ある程度の期間をかけて取り組む業務を担当できるよう調整してもらっています。
また、優先度の相談を随時できる環境も整えてもらっています。
複数の業務が重なったとき、どれを先に進めるかを上長と確認できる機会があることで、
判断の負荷を分散できています。
働く環境に関する配慮
在宅勤務とフレックス制度を利用しています。
どちらも筆者が求めた配慮として現在の職場で認められているものです。
企業側がどのような合理的配慮を実際に行っているかについては、採用担当と当事者の両側を経験した筆者が詳しくまとめた企業が実際に行う合理的配慮の実践例を採用担当経験者が解説した記事も参考にしてみてください。
コミュニケーション・体調管理に関する配慮
上長との定期面談が設けられています。業務の進捗だけでなく、
困りごとや体調の変化を共有できる場として機能しています。
体調の事前相談も認められています。
体調が不安定になりそうなタイミングを事前に伝えておくことで、業務の調整をしやすくなっています。
これらはあくまで筆者の職場での例です。配慮の内容は職場や業種によって異なりますが、「業務の種類」「働く環境」「コミュニケーションの頻度・方法」という三つの軸で整理すると、自分に必要な配慮を考えやすくなります。
上司・人事への合理的配慮の伝え方(タイミング・言い方)
配慮を求めることは権利として認められていますが、実際にどう切り出すかで受け取られ方が変わります。筆者の経験から、タイミングと伝え方のポイントを整理します。
面接のタイミングで伝える
筆者は面接の場で配慮について伝えることを基本にしています。入社後に改めて交渉するより、採用の段階で合意しておくほうが、双方にとって見通しが立ちやすいためです。
伝え方として意識しているのは、配慮を求めることと、その配慮によって会社へ貢献できることをセットで伝えるという点です。「この配慮があれば、こういう形で力を発揮できます」という流れで話すと、面接官に受け入れてもらいやすくなります。筆者はこれをwin-winの伝え方と呼んでいます。
面接での具体的なフレーズや、面接官の反応については、採用担当と当事者の両側を経験した筆者が詳しくまとめた障害者雇用の面接で配慮をどう伝えるか採用担当経験者が解説した記事も参考にしてみてください。
筆者自身は、就労支援事業所で配慮の伝え方をたくさん練習しました。最初はそもそも配慮の伝え方すらわからない状態だったのですが、練習を重ねるなかで、筆者自身の感覚としては「わがままにならない伝え方」へだいぶ変わっていったと感じています。
例として挙げると、筆者が面接で実際に伝えた内容のひとつに、こういった言い方があります。
これはあくまで筆者の場合の一例です。
配慮が必要な理由と、具体的にどうしてほしいかをセットで伝えるという点が、この言い方の核になっています。
実際に面接で配慮について伝えてみると、担当者によって反応にはかなり違いがありました。発達障害や精神障害についてある程度知識のある方の場合は、「それはどういう場面で起こりますか?」といった形で、さらに詳しく確認されることもありました。
一方で、前提知識があまりないように感じる担当者の場合は、配慮について伝えても、ほとんど質問がないこともありました。私には、関心がないというよりも「何を聞けばいいのか分からない」という様子に見えることもあり、どこから説明すれば伝わるのか悩んだ経験があります。
そのなかでも反応がよかったと感じたのは、「何に困っているか」だけではなく、「なぜそれが起こるのか」「自分ではどのような対策をしているのか」「それでも難しい部分について、どのような配慮があると助かるのか」まで具体的に伝えたときです。
私の場合は、配慮だけをお願いするのではなく、自分でできる対策も伝えたうえで、足りない部分を会社に相談する形のほうが、話を受け止めてもらいやすいと感じています。
入社後に伝える・都度伝える
入社後に新たな困りごとが出てきたときは、その都度上長や人事へ相談しています。面接時に全てを伝えきれるわけではなく、実際に働いてみて初めて分かる困りごともあります。
入社後に伝える場合も、面接時と同じく「この配慮があれば、こういう形で貢献できる」という伝え方を基本にしています。配慮を求めることだけを前面に出すより、業務上の目的とセットで伝えるほうが、上長・人事にとっても判断しやすくなります。
配慮を申し出る前の準備:困りごとを『必要な配慮』へ言語化する
「配慮が必要だとは感じているが、何を求めればよいか言葉にできない」という状態は、伝える前の段階でよく起きます。上司や人事に話す前に、自分の困りごとを整理しておくと、伝えやすくなります。
困りごとを書き出す
まず、職場で困っていることを思いつくままに書き出します。「何が難しいか」「どの場面でつまずくか」を具体的に書くほど、次のステップで整理しやすくなります。
このとき、「自分の特性のせいだから仕方ない」と判断せず、困っている事実をそのまま書くことが大切です。特性と困りごとの関係を整理するのは、その後の作業です。
困りごとを「配慮の言葉」へ変換する
書き出した困りごとを、「どうなれば解決するか」という形に言い換えます。
たとえば「業務の優先順位が分からなくなる」という困りごとは、
「優先順位を上長と定期的に確認できる機会がほしい」という配慮の言葉に変換できます。
この変換が、上司・人事への申し出を具体的にする核になります。「困っている」だけでは相手も対応しにくく、「こういう配慮があれば解決する」という形にすることで、話し合いが進みやすくなります。
業務・環境・コミュニケーションの三軸で整理する
変換した配慮を、「業務のアサイン・タスク管理」「働く環境」「コミュニケーションの頻度・方法」の三つに分類すると、申し出の全体像が見えやすくなります。
全てを一度に求める必要はありません。
困りごとの大きさや緊急度に応じて、伝える順番を決めることも、準備の一部です。
申し出前の準備については、特別なことはあまりしていません。ただ、自分の言葉でしっかり伝えられるよう、相手からの質問に対して答えられる程度の自己分析は行いました。
筆者が実際に意識したのは、困りごとを整理する際に
「性格なのか特性なのか」をしっかり区別することでした。
たとえば経験値不足による困りごとは障害特性とは関係ないと判断し、その点は明確に整理しました。また、「この配慮をもらえたらプレッシャーや不安がなくなること」を特性という観点から自己分析する時間を作るようにしました。
上長や人事へ伝える際に筆者が最も意識したのは、障害特性を相手が全く知らない前提で話すということです。「こういう配慮が欲しい」と伝えるだけでは、筆者の経験上、相手が「なんで?」となることがほとんどでした。だからこそ、その「なんで」にしっかり答えられる内容とセットで伝えるようにしていました。
合理的配慮はどこまで求められる?『過重な負担』の考え方
合理的配慮は、希望した内容がそのまますべて認められるものではなく、
会社側に「過重な負担」とならない範囲で検討されます。
厚生労働省の「合理的配慮指針」では、過重な負担に当たるかどうかは、事業活動への影響、実現の難しさ、費用や負担、企業規模、財務状況、公的支援の有無などを踏まえて、個別に判断するとされています。
ただ、お願いした配慮がそのまま難しいからといって、そこで話が終わるわけではありません。過重な負担に当たる場合にはその理由を説明し、本人の意向を尊重しながら、負担にならない範囲で別の方法を話し合うことも示されています。
私自身、障害を開示して働くなかで、一人ですべてを完璧にこなそうとすることには限界があると学びました。だからこそ、自分でできることと難しいことを見定め、自分に嘘をつかずに伝えることが大切だと感じています。
配慮を求めることは、何でも会社に任せることではなく、お互いに現実的な方法を探していくことだと私は考えています。
配慮してもらえないときの相談窓口・支援機関
筆者自身は、職場で配慮を認めてもらえなかった経験は基本的にありません。ただ在宅勤務については、配慮としてお願いしていても会社方針に従わなければいけない場面があり、完全に通るわけではないと感じることがありました。
在宅勤務の件についてハローワークに大袈裟な相談はしていません。ただ、障害の配慮という観点から、ハローワークに在籍している精神福祉士の方に「どのように伝えた方がいいか」「配慮がもらいやすい会社があるか」という点は相談しました。
会社に合理的配慮を相談しても話がうまく進まないときは、一人で抱え込まず、外部の支援機関へ相談する方法もあります。
障害者雇用における合理的配慮については、
都道府県労働局やハローワークが相談先のひとつです。
また、地域障害者職業センターでは、障害のある本人への職業面の支援だけでなく、会社側への雇用管理に関する助言なども行っています。仕事と生活の両面から相談したい場合は、障害者就業・生活支援センターという選択肢もあります。
なお、内閣府には障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」があり、電話(0120-262-701)やメール、WEBフォームなどから相談できます。
ただし、雇用・就業関係は「つなぐ窓口」の対象外です。
配慮について会社と自分だけで話し合うのが難しいときもあります。
そんなときは、第三者の力を借りながら、自分にとって現実的な働き方を一緒に考えていくこともひとつの方法です。
障害者雇用という選択肢そのものへの不安(収入・就活・気持ち)を整理したい方は、ADHD当事者が体験をもとにまとめた障害者雇用の収入・就活・気持ちの不安を当事者が整理した記事も参考にしてみてください。
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