発達障害の特性を持ちながら子育てをしていると、
「なぜこんなに段取りがうまくいかないのか」
「子どもへの対応がうまくできない」
と感じる場面が積み重なることがあります。
この記事では、当事者親が子育てで困りやすい具体的な場面と、
その背景にある特性、そして今日から試せる対処法と相談先の選択肢を整理します。
この記事を書いた人
たかちゃん
ADHD×ASDと約20年向き合ってきた30代会社員。 障害者雇用で働きながら子育てをしています。 働き方・子育て・暮らしについて、当事者として実際に経験したことを中心に発信しています。
詳しいプロフィールを見る発達障害の親が子育てで困りやすいこととは
子育ての困りごとは、「段取りが崩れたとき」に集中しやすいです。
予定通りに進んでいれば何とかなっていても、子どもの急な体調不良や保育園からの呼び出しなど、イレギュラーな出来事が重なると対応が追いつかなくなる。筆者自身、イレギュラーへの対応が最も困った場面のひとつです。
聴覚過敏がある場合、子どもの泣き声や騒音が想定以上に負担になることがあります。子どもを責めているわけではないのに、音そのものがつらくて余裕がなくなる。そういう状況で「落ち着いて対応する」のは、気合いでどうにかなるものではありません。
仕事と子育ての両立も、当事者親にとって特有の難しさがあります。仕事でエネルギーを使い切った状態で帰宅し、そこから育児と家事をこなすという構造は、特性のある人には特に消耗しやすい。子どもの気持ちを読み取ることへの難しさも、筆者が困りごととして挙げた場面のひとつです。
こうした困りごとは、「親としての能力が低い」ということではなく、特性と子育ての組み合わせから生じる構造的な問題です。次の章では、その背景にある特性について整理します。
困りごとの背景にある発達障害の特性
発達障害の特性の現れ方は人によって異なります。
国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターでは、発達障害は症状が通常低年齢において現れる一方、年齢や環境によって目立つ症状が変わることがあると説明されています。
そのため、「大人になって突然、発達障害になった」というよりも、仕事や家庭など生活環境や役割が変わったことで、それまで何とか対応できていた特性が困りごととして目立つようになる場合がある、と考えるほうが近いでしょう。
子育てが始まると、自分の予定だけで生活することは難しくなります。子どもの体調不良や急な予定変更への対応、家事をしながら子どもを見ること、仕事から帰ったあとも育児や家事が続くことなど、複数のことへ同時に対応しなければならない場面も増えます。
筆者自身も、子育てをするようになってから、イレギュラーへの対応や聴覚過敏、仕事・家事・子育てを並行して進めることに難しさを感じてきました。これは「発達障害の親なら必ずこうなる」という意味ではなく、あくまで筆者自身に現れている困りごとです。
また、ここで紹介している内容だけで発達障害かどうかを判断することはできません。同じ診断名でも特性や困りごとの現れ方は一人ひとり異なるため、診断や治療に関する判断が必要な場合は医療機関などの専門家へ相談してください。
今日から試せる子育ての対処法・工夫
対処法を考えるとき、「完璧な仕組みを作ろう」とすると続かないことがあります。筆者の経験でも、厳密なスケジュール管理は効果がなかったとのことです。細かく組み立てるほど、イレギュラーが起きたときに崩れやすくなる。
効果があったのは、シンプルに考えること、そして悩まない工夫をすることでした。「どうすれば完璧にできるか」ではなく、「今日これだけできれば十分」という基準を下げる方向の発想です。
具体的な工夫として、以下のような方向性が当事者親には合いやすいです。
これらはあくまで方向性の例です。何が合うかは人によって異なるため、試してみて合わなければ別の方法に切り替えることを前提にしてください。
生活・段取りを整えるための具体ツールと仕組み
ツールや仕組みを使う目的は、「頭の中で覚えておく量を減らすこと」です。記憶や注意に負荷をかけず、外部に任せられる部分を増やすほど、子どもへの対応に使えるエネルギーが残ります。
取り入れやすい仕組みの例を挙げます。
- スマートフォンのリマインダーやアラームで、時間になったら通知が来るようにする
- やることリストをアプリや紙に書き出し、頭の中から出す
- 子どもの持ち物や準備物をチェックリスト化して、毎回同じ手順で確認できるようにする
- 家の中の定位置を決め、「考えなくても置ける場所」を作る
筆者が実際に取り入れているのは、家族カレンダーを作って予定を見えるようにしておくことです。子どもの予定・自分の通院日・家族全体の予定・夫婦それぞれの予定を一か所に書き出しています。導入前は通院日を後から知った、ということもありました。カレンダーをつけるようになってからは、スケジュールを忘れてしまうことはなくなったと感じています。一人だったころより予定が増えた分、こうした仕組みが必要になったという面もあります。
もう一つの工夫が、家事中に子どもを見るマルチタスクへの備えです。家事をしながら子どもを見るという状況は日常茶飯事になるため、筆者はシール・お絵描き帳・パズルなど、子どもが集中できるものを多く用意するようにしています。筆者自身は、こうしたものを手元に揃えておくことは、自分のような特性のある親にとっては特に重要だと感じています。
一人で抱え込まないための相談先・支援の活用
筆者は、すべての悩みを一つの場所へ相談するのではなく、
困っている内容によって相談先を分けています。
発達障害を抱えながら子育てをして、仕事をして、さらに家事もこなしていくには、生活全体のバランスを考える必要があります。筆者自身、何か一つに力を使いすぎてしまうと、その反動で別のことができなくなってしまう可能性があると感じています。
そのため、家事や子育てなど生活面で困ったことについては、主治医を中心に相談しています。一方、仕事については、筆者が利用している地域の「障害者就労支援センター」の方に支援してもらっています。必要に応じて筆者と会社との間に入ってもらい、安定して働き続けるための定着支援を、メンターのような立場で行ってもらっています。
「子育ても仕事も家事も、全部自分で何とかしなければいけない」と考えるのではなく、それぞれの分野で頼れる人を作っておく。これは筆者にとって、生活全体のバランスを崩さないための大切な工夫の一つになっています。
公的な相談先としては、都道府県・指定都市などに設置されている発達障害者支援センターがあります。発達障害のある本人や家族からの相談に応じ、保健・医療・福祉・教育・労働などの関係機関と連携しながら支援を行っています。
仕事については、厚生労働省が案内している障害者就業・生活支援センターも選択肢の一つです。就業面と生活面を一体的に支援する地域の窓口で、職場で安定して働き続けるための相談にも対応しています。
なお、筆者が実際に利用している「障害者就労支援センター」と、全国に設置されている「障害者就業・生活支援センター」は名称や仕組みが異なる場合があります。利用できる支援は地域によっても異なるため、詳しくはお住まいの自治体や各支援機関の案内を確認してください。
どこに相談すればよいか迷ったときは、無料で使える外部の相談窓口も選択肢のひとつです。具体的な窓口の情報は一人で抱えるのが限界なら使える相談窓口でまとめています。
特性のプラス面と自己肯定感を保つ視点
発達障害の特性は、子育てで困りごとを生む一方で、プラスに働く場面もあります。筆者の場合、好奇心の強さが子どもとの遊びにつながっているという体験があります。子どもが興味を持ったことに一緒に深く入り込める、という形で特性が活きることがあるということです。
気持ちの切り替えについても、筆者は特性としての切り替えの経験を持っています。落ち込んだ状態を長く引きずらずに切り替えられることが、子育ての場面で助けになることがあります。
自己肯定感を保つ上で、筆者にとって一番大きな支えになっているのは家族との日常です。
出社した日に家へ帰り、「おかえり〜」と言ってもらえるだけで安心することがあります。もちろん、一人で過ごす時間も筆者にとっては大切です。それでも、妻と一緒に子どもの成長を感じながら生活し、休みの日には子どもを連れて遊びに行く。そんな何気ない毎日が、自分にとって大きな支えになっています。
子育ても家事も仕事もある生活は、決して楽なことばかりではありません。それでも筆者にとっては、その大変さも含めた今の日常そのものが、「また明日もやっていこう」と思える理由になっています。
特性を「克服すべき欠点」として扱い続けると、消耗するだけです。困りごとに対処しながら、同時に特性が活きる場面を意識的に見つけておくことは、長く子育てを続けるための現実的な視点です。
好奇心については、色々なことに興味が持てるという特性が、子ども目線で一緒に遊べることにつながっていると筆者は感じています。また、自分自身が発達障害当事者であるため、子どもの言動を自分と比較して「これは通常発達だな」と判断できる、という場面があります。筆者はこの点が一番役立っていると感じており、ネットの情報で子どもを見るより、自分の特性や発達障害について学んできたことのほうがものすごく活かされているという実感があると述べています。
気持ちの切り替えが助けになった場面として、筆者が挙げているのは2つです。育児でうまくいかなかったとき、「自分はダメな親だ」という気持ちを引きずらずにいられること。もう一つは、気持ちの切り替えをいい意味で使いながら、仕事・家事・子育てのバランスを保って体力をセーブできていること。いずれも筆者自身の経験として語っているものです。
まとめ:困りごとは工夫と相談で軽くできる
この記事で整理した内容を振り返ります。
- 当事者親が困りやすい場面は、イレギュラー対応・聴覚過敏・仕事と子育ての両立・子どもの気持ちの理解など、特性と子育ての組み合わせから生じるものが中心です。
- 発達障害の特性は、年齢や環境によって目立ち方が変わることがあります。筆者の場合は、子育てによってイレギュラー対応や複数タスクへの負担をより強く感じるようになりました。
- 対処法として効果があったのは、厳密なスケジュールではなく、シンプルに考えること・悩まない工夫でした。ツールや仕組みで「頭の外に出す」ことも有効な方向性です。
- 相談先は一つに絞らず、家事・子育ては主治医、仕事は地域の障害者就労支援センターなど、悩みの内容に応じて頼る先を分けています。
- 特性は困りごとの原因になる一方で、好奇心や気持ちの切り替えなど、子育てでプラスに働く面もあります。
対処法はひとつ試してみて、合わなければ別の方法に切り替えるという前提で動くのが現実的です。相談先についても、「まず話してみる」という一歩が、選択肢を広げる入り口になります。
一人で抱え込まなくてよい状況を、少しずつ作っていくことが、長く続けるための土台になります。

コメント